山形地方裁判所 昭和41年(ワ)195号 判決
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〔判決理由〕四、損害について
(一) 原告ら訴訟代理人は、当裁判所のたびかさなる、釈明にもかかわらず、その損害殊に、原告ら各自の物的損害の項目額及び慰謝料の区分等について、その主張をいささかも明確にせず、かつ、その立証も、例えば原告申請に基づく取寄記録中からの書証の提出及びその写し提出行為等が右取寄記録顕出時から年余も遷延する状態で、全面的に怠惰の極みに終始した。従つて当裁判所としては、主張責任の法理により、原告らの請求はこれを全面的に棄却するのが、当事者主義に立脚する民事訴訟法の原則に合致するものと考える。しかし他面、正当な権利を有する交通被害者がたまたま訴訟代理人一人の懈怠により、その権利の実現を期し得ないとするは、時流に即応せず、甚だ酷であると言わざるを得ない。従つて、不完全な主張の中から強いて忖度し得るものを止揚し、以下判断する。
(二) 請求原因事実(三)1(1)(2)・2(2)(3)(4)・3・4(1)(2)・5につき、本件につき提出された全証拠によるも、右損害はこれを認めることができず、かつ、そのうち当然出捐したことが顕著であると考えられる部分もあるがこれに関し具体的主張を欠くから、右請求はいずれも失当である。
(三) 請求原因事実(三)2(1)につき、<証拠>によると、原告光明は昭和三五年六月一五日生れであり、右傷害の治療のため昭和四〇年一一月一日から、昭和四一年一月一三日まで、山形県中央病院に入院し、この間当初のうちは原告光明の母が付添い、その後は職業的付添人を雇い、原告光明の付添の任に当らせたことが認められ、これに反する証拠はない。右認定の原告光明の年令と、右二認定の同原告の受けた傷害の程度をもつてすれば、同原告の右入院の全期間を通じ、その付添が必要であつたものと認める。
ところで右の如き事情下について、同一家団に属する近親者が病人に付添つたときは、格別付添費に関し、その金員の移動等がない場合でも、それは職業付添人と同一視し、本件事故による原告光明の損害に該当するものと評価するのが相当である。しかして本件について、原告光明の母と職業付添人の各付添期間の区別は詳かでなく、かつ付添費の額について格別の証拠はないが、右近親者の場合でも、職業的付添人若くは、家事手伝婦等の一般的賃金の額に準じて決するのが相当であるところ、職業的付添人の付添賃金が近時(昭和四〇年当時も含む)一日一、〇〇〇円を下らないものであることは当裁判所に顕著な事実であるから、原告光明の主張する一日金五〇〇円宛の金額は相当であると認める。従つて、付添人一日金五〇〇円とした(原告光明の母及び職業付添人共通)五八日間の付添人費用は金二万九、〇〇〇円となる。この部分に対する原告光明の請求は理由がある。
(四) 請求原因事実(三)6(慰謝料)につき、
1 右認定の原告光明の年令、傷害の程度及び<証拠>により認められるところの、原告光明には、右傷害を原因とし外傷性てんかんの疑いがあるため、前記外傷が癒えた以後現在に至るも、精神病院に通院してその治療を受け今後一〇年間これを継続する必要があり、顔面には前記外傷の痕跡がある事実、それに<証拠>によつて認められるところの本件事故は、被告がその進路前方の道路脇に、原告光明外一名の幼児が佇立していたのを認めながら、その動静に充分注意しなかつたことによる過失と、原告光明外一名の幼児が、被告車に気付かず、道路中央部まで進行したことによる軽挙行動により惹起されたもので、これら被告に存する過失の程度と原告光明に存する事情並びに本件事故後の被告の原告らに対しとつた措置態度等を総合すると、原告光明の慰謝料は金四〇万円が相当であると認める。
2 原告大泉政見、同大泉童代の慰謝料請求については、前記認定の原告光明の受けた傷害の程度からみて、同傷害が生命侵害と同一視し得る場合に該当しないことが明白であるから民法七一一条に該当せず、従つて右原告らは本件事故による慰謝料請求権を有しない。
3 なお、原告らは慰謝料として原告らとして金五〇万円を請求しており、右1認定の如く原告光明一人につき金四〇万円を認容することは、原告三名に分割した額を越え民事訴訟法一八六条に反する疑もあるが右(一)の趣旨及び右三名につき金五〇万円としたのは、代理人の無理解に基づく外、弁論の全趣旨によると帰するところ、原告光明についての慰謝料請求であると考えるのが相当であるから、右原告光明に対する認容額は右法条に反しないものと解する。
(五) 以上認定のとおり、本件事故により原告光明の受けた損害は、右(三)(四)1の合計金四二万九、〇〇〇円である。
(伊藤俊光)